姑息な高体連の決定

 5月23日の新聞報道によると,全国高校体育連盟(高体連)は,22日に開いた理事会,評議員会で,来年の全国高校駅伝競走大会から,男女ともに,外国人留学生の1区起用を禁止することを決めた,という。「1区で大きく外国人留学生がリードし、ファンから『まったく興ざめだ』などというおしかりの声が殺到しており、建設的に検討を重ねた結果、今回の措置になった」(梅村和伸・高体連専務理事)ということだ。
 確かに,男子の部では,このところ14年連続してケニアからの留学生が1区(10km)の区間賞を独占している。しかし,だからといって,「外国人留学生の1区起用を禁止する」ということには疑問が有る。
 駅伝は総合力の勝負だから,1区で大きくリードしたからといって,それで勝敗が決するとは限らない。現に,この14年間のうち,1区のリードがそのまま優勝につながったのは4回だけ(いずれも仙台育英)だし,7回は,日本人選手だけのチームが,2区以降で追い上げ,優勝している。1区での差を最小限に食い止め,2区以降でどれだけ追い上げるかということも,十分にレースの興味を盛り上げることだ。
 また,1区起用を禁止しても,2004年の大会では,外国人留学生を3区(8.1075m)に配置して逆転優勝した仙台育英の例も有る。ずば抜けた力を持つ選手を擁していれば,3区で起用しても,独走態勢を築くことができる。しかし,それには後続の走者の踏ん張りが欠かせない。それでも「興ざめ」だと言うのだろうか。
 要は,外国人留学生は「速すぎるから」1区起用を禁止するという考え方に矛盾が在る。もしも,日本人で外国人なみの走力を持った選手が現れたら,その起用も禁止するというのか。外国人選手を特別視するよりも,彼らに対抗できる日本人選手の育成のほうがたいせつなことだろう。
 一部の学校が勝たんがために留学生を招き入れているという事実が有れば,それは別の問題として批判されなければなるまいが,今回の高体連の決定は,留学生の出場は1校1人とする現行の制限の上に,さらに,「ファンの声」を口実にして制限を加えようとする姑息な手段だとしか思えない。力と技とを競うスポーツの世界は,そんな狭いものではないはずだ。
 高校駅伝に限らず,大学や実業団の駅伝をはじめ,日本のスポーツ界全般での外国人の進出は,近年著しい。外国人の活躍を排除しようとする関係者やファンがいるとすれば,それは,最近の狭量なナショナリズムの傾向と重なるものに思えるし,その批判を避けようとする高体連の姑息な姿勢は,世論の批判を躱すために,本質的な問題から外れたところで,ごまかしの政策を打ち上げる今の政府の手法とも共通するものだという気がする。

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