解っていないこと

 私の肉親の中で最も長命だったのは96歳で亡くなった母だけれど,戦死した父と広島で被爆死した母方の祖父は別にして,現在の私より高齢になるまで生きたのは,母方の祖母と妻の長兄の二人だけで(ともに享年88歳),私自身が身近で見守ることができたのは母のみである。その母は脳幹の腫瘍出血で突然倒れるまでは元気に暮らしていて,救急車で運ばれて半月経たないうちに意識を喪ったまま亡くなったから,老齢による衰えを真に実感するまでには至らなかった。それでも,思い返してみると,食事などの面でやはり衰えていたのだなと今にして気付くことはいくつか有るけれど,そのときは深く考えることも無かった。私自身が齢を取って初めて解ることが少なくない。我が身で体験しないと,理屈の上では解っていても,たとえ親子や夫婦の間でも解らないことは多いものだと痛感する。そのことは産婦人科に関わる女性の心身の状態が男性には体感できないのにも通じることだろうが,老化の場合は,自分も同様にその年齢に達すれば初めて解ることだ。
 医師であっても同じことではなかろうか。呼吸器,循環器,消化器,口腔等々,それぞれの分野で疾病に対する研究や治療技術が格段に進んでいる現代でも,加齢によってそれらの機能が衰弱した場合,快癒に至る的確な治療法が有るとは思えない。できるだけ栄養を補給しつつ,少しでも楽ができるよう見守っていくほかは無いのではなかろうか。理論的に言えることと事実上推奨できることとは別で,当人の辛さを真に理解して効果的に対処するのは容易でないと考えられる。理解できないことは当人の望みに任せるしかあるまい。
 理解できないと言えば,自分は高給を取って国民の金を思うように費っている政官界の高位に在る人やその秘書官たちは,辛い生活に耐えている国民の情況が本当に解っているのか,コロナウイルスの影響を受けている現在の社会の厳しい状況に対する行き当たりばったりの思いつきの施策を見ていると,改めて疑念が増すばかりだ。その陰でいつの間にかないがしろにされていることも多い。
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進化の功罪

 知人の動向を知るのにブログやツイッターを見る。しかし,先日も書いたように,先方の加齢等の事情に因る場合も有ろうが,時日の経過とともにブログを書く知人がほとんどいなくなった。私自身もパソコンに文章を入力することがしだいに厄介に思われるようになってきて,断片的な思いをツイートするだけのほうが楽ではないかという気になりつつあるけれど,それでは他者に思いが十分には伝わらない,書くからにはせめて短いなりにもブログの形で述べたいと思い直している。
 それに,最近気付いたことで,OSにWindows10を使っている私の場合,これまでツイッターを見るときはIEを通していたのだが,「このブラウザは現在サポートされていません」という表示が出て使えなくなり,詳しい事情は解らないもののMicrosoft-Edgeに切り替えて登録し直さなければならないことになった。
 それは私の個人的な情況にすぎないけれど,IT界の現況を見るにつけて,SNSが意見を拡散させて政治を動かす力まで持つようになった反面,根拠の無い中傷など,人権を侵すような場面が増えてきて,功罪の大きさが目立って感じられる。メールやクレジットカードを利用した詐欺の横行は論外だとしても,迷惑な入り込みも少なくない。
 米大統領をはじめ,ツイッターを使う政治家も増えているけれど,本来ツイッターやLineは個人的な「つぶやき」や連絡を発信するメディアであって,政治家が無責任な自己主張に利用すべきものではないと考えられる。政治家は常に言葉を尽くして説明責任を果たすよう努力すべきものだろう。
 私がブログで述べているのは,私より若い世代の人たちに,私の年代の者が体験してきたことや老後の思いを知って参考にして欲しいからのことで,そのためにできるだけ具体的に詳しく記すよう心掛けているつもりだ。
 ノーベルの時代ならずとも,科学文明の進化が人間社会に及ぼした功罪は計り知れないものが有る。近年のITをはじめとする文明の発達は暮らしを格段に便利にしたことではあるけれど,逆に,高齢者や身体の不自由な人にとっては,不便で暮らしにくくなったことも多いはずだ。その理解や思いやりに欠ける政治や行政の施策が増えている昨今の傾向は,一考を望みたいことでもあり,詐欺横行の一因にもなっているのではなかろうか。

夢のような話がしたい。

 「(私は)よく眠ります。連続8時間は眠り、昼寝もするので累計睡眠時間は1日10時間に及びます。」「寝起きは頭がクリアで、起きるなり仕事ができます。その状態を何回もつくれば作業効率が上がると思って、昼と夕食後に仮眠するのです。」と,作家の島田雅彦さん(59)は言っている。(7月4日付「朝日新聞」be面『私のThe Best!』聞き手・林るみ)
 島田さんは続けて言う。「睡眠中の脳は目覚めているときとは違う働きをしていて、それが創作や発想の源泉になっているという自覚があります。心折れる外界から距離を保ちつつ、妄想の世界で自由に遊べるこのクリエイティブな時間はマイ・ベストといっていいでしょう。」
 私は作家ではないけれど,文章を書くのは好きだし,扱う機会も少なくないほうだと思っているので,まさに同感だ。特に高齢になってからは,脳の活性化のために適宜の睡眠が欠かせない。半睡半醒の中で「クリエイティブな時間」を持つことも少なくない。しかし,過去の現実の記憶を夢に見ることはほとんど無い。
 「この齢になるまでには,戦後の辛い体験も厭な思いもずいぶん重ねて来ているけれど,それを夢に見ることは無い。夢そのものを見ることの少なくなった今でも,たまに見るのは懐かしいことか楽しいことで,目覚めてからもう一度見直したくなるような『夢物語』が多いのは,悪い記憶は引きずらず,何事も前向きに捉えようと気持ちをコントロールしているからだろうか」と書いている(2019.3.19「夢物語」)ように,目覚めてから書き残しておきたいようなものも有るのだが,そのときはもう「懐かしい」「楽しい」という雰囲気の記憶だけで,具体的な内容は思い出せなくなっているのは,これも老化の証しの一つなのだろうか。
 せめて現実でも,生きる原動力となるような,明るく前向きな話がしたいものだと,そういう話題を引き出してくれる相手を切に求めている。

老いの願い2

 朝,目はいちおう覚めていても,起き出す気力がなかなか出ない。無理に立ち上がろうとすると頭がふらつく。機能を動かすための暗証番号が有ったはずだがと,茫とした中であれこれ考えている。
 気力を奮って身支度を済ませ朝食を摂り了えたころ,ようやく少しずつ頭が働き始める。まず新聞に目を通そうとするのだが,最近は視力が弱ってきて細かい字は読みづらく,何段にも亙る記事だと読み違いや飛ばし読みが多くて捗らない。開催が中止されていた各種のスポーツが少しずつ復活しつつあり,プロ野球も無観客試合ながら第2節に入ったところだが,昨年来何度か書いたように,長年続けてきた記録等は視力の衰えに応じて減らしているのでかえって良かったようなものだけれど,わずか半年足らずの間に馴染みの無い名前の選手が増えたような気がして,何となく関心が薄れてしまった。政治や社会に関する話題はうんざりするようなことが多くて,丹念に目を通す気にはなかなかなれない。
 次の作業はパソコンのチェックだけれど,必要ないくつかの検索サイトとメールの送受信機能や知人のブログサイトのほかは,多くを削除してしまった。新聞同様に,細かい文字が読みづらいし,色付きの字や絵文字混じりの文章は読み取りにくい。まず,時間潰しにしていたゲーム類は,眼が疲れるばかりだし,最近は迷惑メールが入り込んでいることも増えているので,最初にアンインストールした。
 旧知のブログサイトで,これは先方の加齢等の事情に因る場合も有ろうが,時日の経過とともにいつの間にか消滅しているものも少なくない。私自身もパソコンに文章を打ち込むことがしだいに厄介になってきつつある。
 こういう事態が重なってくると,せっかく元気を出して起きたところで楽しみが無くて,毎日がつまらなくなってしまう。私に生きる楽しみを与えてくれるパスワードは無いものだろうか。